お役立ちコラム

トラックのギアがなぜ抜けない?エアーが原因?その構造から原因を解説

2023年05月10日

大型トラックを運転する皆さんの中には、クラッチペダルが異常に重くなりギアが抜けなくなる経験をした方もいるかもしれません。
では、この時トラックには一体何が起きているのでしょうか?
今回は、クラッチペダルが重くなる原因を構造から理解し、対処法を確認していきましょう。

トラックのギアがなぜ抜けない?エアーが原因?その構造から原因を解説

クラッチギアの構造は?

ではまず、トラックに使われているクラッチの構造はどのようになっているのでしょうか?
また、クラッチペダルを踏むとクラッチが変わるメカニズムは何なのでしょうか?
ここでは、それぞれの構造や役割を確認していきます。

クラッチの構造

クラッチは基本的に下記の4つの部品で構成されています。

①フライホイール
②クラッチディスク
③ダイヤフラムスプリング
④クラッチカバー

これらの部品はエンジンから各車輪に繋がる主軸に取り付けられており、取り付け順はエンジンから①フライホイール②クラッチディスク③ダイヤフラムスプリング④クラッチカバーとなっています。
では、それぞれの部品はどのような役割があるのでしょうか?
順に解説していきます。

①フライホイール
この部品は、エンジンの動力軸(クランク軸)に取り付けられており、主にエンジンの慣性力を維持する円盤状の部品です。

②クラッチディスク
この部品も円盤状の部品で、その表面は摩擦力の高い素材でコーティングされています。
また、この部品は摩擦力の高い表面部分とフライホイールの表面が接触するように取り付けられており、その中心部にクラッチ軸(各車輪へと繋がる軸)も取り付けられています。

③ダイヤフラムスプリング
この部品は、お皿のような形状をしたバネ部品で、②クラッチディスクにこの部品の外側表面が接触するように取り付けられています。

④クラッチカバー
この部品は、②クラッチディスクと③ダイヤフラムスプリングを覆っているカバーで、③ダイヤフラムスプリングに取り付けられています。

トラックがクラッチを繋いで運転している時は、①②③の部品が全て接触しており、エンジンの動力が各車輪に伝えられています。

しかし、クラッチを外す場合は、クラッチペダルを踏むことにより③ダイヤフラムスプリングの凸の部分(皿の中心)がエンジン側に押され、③ダイヤフラムスプリングの外側の面が②クラッチディスクから離れます。
すると、②クラッチディスクを押している力が無くなり①フライホイールとの摩擦力を失うため、エンジンの動力が車輪に伝わらなくなります。

クラッチペダルの役割

ここまでで、ダイヤフラムスプリングの動作によりクラッチの入り切りを実現していることがわかりました。
では、クラッチペダルはどのようにしてダイヤフラムスプリングを動作させているのでしょうか?
クラッチペダルの先には、手動で動くポンプのようなもの(自転車の空気を入れるポンプのイメージ)が取り付けられています。

また、そのポンプの先には油が入ったホースが用意されており、その先がダイヤフラムスプリングに繋がっています。
この構造により、クラッチペダルを踏むとポンプが動作し、先に繋がるホース内の油がダイヤフラムスプリングを押して、クラッチが外れます。

一方、大型のトラックになればなるほど、エンジンの回転から生まれる力(トルク)が大きくなります。
そのため、ダイヤフラムスプリングがクラッチディスクを押す力もより強い力が必要となり、それを外すために使う力(クラッチペダルから与える力)も大きくする必要があります。

そこで、大型のトラックなどでは次項で述べるクラッチブースターという部品が用意されており、ダイヤフラムスプリングを押す力をアシストしています。

クラッチブースターとは?

では、クラッチブースターとはどのような部品なのでしょうか?
この部品の基本原理は、竹の水鉄砲と同じで筒の中に空間が有り、先端の押し棒を押すことで内部にある空気を外に押し出します。
この押し出された空気の力が、クラッチペダルの先にあるホース内の力をアシストし、ダイヤフラムスプリングをより強い力で押せるようになっています。

クラッチペダルが重くなる原因は?

では、なぜクラッチペダルが重くなるのでしょうか?
それは、クラッチブースターから出るエアーの供給不足により、ダイヤフラムスプリングを押す力が低下した可能性が考えられます。
前述で述べた通り、クラッチブースターが故障すると、クラッチペダルをアシストする機構がなくなるのでクラッチペダルが重くなる1つの原因と言えます。

クラッチペダルが重くなったらどうしたらいい?

前項のようにエアーによるアシスト不足の可能性が懸念されるため、下記2つの確認がすぐに出来ることとして挙げられます。

①エアタンク内に水が溜まっていないかを確認
この場合、クラッチに供給するエアーが水に溶け込んでしまいアシスト力が低下しているケースが考えられます。

②エアコックの確認
この場合、エアコックが閉まっておりエアーが供給されていないケースやエアコックが半開きになっておりエアーが必要分供給されていないケースが考えられます。

また、上記①②のどちらでもない場合は、速やかにJAFなどの機構に連絡が必要だと考えます。

トラックのギアがなぜ抜けない?エアーが原因?その構造から原因を解説 まとめ

今回は、トラックのギアが入らない場合の原因などを解説しました。
構造から原因を予想することで、不慮のトラブルでも焦らず行動が出来る可能性が上がります。
そこで、本記事を参考に適切な知識を知っていただければ幸いです。